日本の夏、暑すぎませんか。
多肉植物を育てていると、
「昔はこんなに夏越しが大変だったかな?」
と思うことがあります。
実際、熊谷の最高気温を少し振り返ってみると、
- 2000年8月1日 36.7℃
- 2021年8月10日 37.2℃
- 2025年8月5日 40.7℃
となっています。
もう人間だって外に出たくありません。
当然、多肉にとっても楽な環境ではありません。
そこで、
「日本の夏は年々暑くなっている。このまま気温が上がり続けたら、そのうち日本の一部地域では多肉を育てられなくなるんじゃないか?」
そんなことまで考えてしまいます。
でも、少し調べてみると、話はそれほど単純ではありませんでした。
気温は毎年上がっているわけではない
日本の気温は、毎年少しずつ一直線に上昇しているわけではありません。
暑い年もあれば、比較的涼しい年もあります。
気象庁のデータを見ると、日本の気温は年ごとにかなり上下しています。
ただし、その上下を繰り返しながら、長期的には上昇しているのでしょうね。
気象庁によると、日本の年平均気温は1898〜2025年で、100年あたり1.44℃の割合で上昇しています。
つまり、
「来年は今年より必ず暑くなる」
という話ではありません。
冷夏になる年もあり得ます。
世界最高気温は100年以上前
ここでちょっと面白い話。
アメリカ・カリフォルニア州にあるデスバレー。
『スター・ウォーズ』の撮影地としても知られている場所です。米国国立公園局も、『新たなる希望』や『ジェダイの帰還』がデスバレーで撮影されたことを紹介しています。

このデスバレーでは、
1913年に56.7℃
という気温が観測されています。
そしてこの記録は、現在も世界気象機関が公式の世界最高気温として扱っています。
100年以上前です。
「地球は温暖化しているのに、なぜ100年以上前の記録がまだ残っているの?」
と思いますよね。
気温には、エルニーニョやラニーニャ、海洋の変動、火山活動などさまざまな要因が影響します。
ですから温暖化しているからといって、毎年必ず最高気温記録が更新されるわけではありません。
話を多肉に戻しましょう。
以前は45%遮光で問題なかった
うちでは少し前まで、
45%遮光
で夏を乗り切っていました。
これで特に大きな問題はありませんでした。
ところが昨年。
園芸ハウスに移って初めての夏を経験しました。
一つのハウスには、もともと60%遮光の設備が付いていました。
最初に見たときは、
「60%ってちょっと遮光強すぎじゃない?」
「45%くらいに張り替えようかな」
なんて思っていたんです。
でも多肉のお世話をしているうちに後回しになりました。
結果的には、
張り替えなくてよかった。
昨年の夏は、とにかく暑かった。
むしろ、
60%でも足りないんじゃないか
と思うくらいでした。
45%遮光では全然足りなかった
もう一つのハウスには遮光設備がありませんでした。
そこで、
「今まで45%で問題なかったんだから」
という経験から、45%の遮光ネットを張りました。
ところが、
全然足りない。
多肉が日に日に黄色くなっていきました。
葉焼けというより、
全体的に葉色がおかしくなっていく。
明らかに暑さと強光のストレスを受けているように見えました。
そこで昨年は、
「あれをやってみよう」
「これもやってみよう」
と、とにかく思いつくことを次々と試しました。
店長の頭の中は、
強い日差しとの戦い。
敵は太陽。
それしか見えていませんでした。
今年は最初から強遮光
そして今年。
昨年の失敗を繰り返したくありません。
そこで、最初から強めの遮光をすることにしました。
45%遮光だったハウスには、
さらに30%の遮光ネットを追加。
単純に75%遮光になるわけではありませんが、かなり光量を落とせます。
一方、60%遮光のハウスについては、
「ここももう少し遮光した方がいいかな?」
と迷っていました。
ところが今年は、昨年ほど多肉の状態が悪くありません。
昨年のように、
高温障害と思われる黄色い葉が次々に出ることもない。
種類によっては外葉に黒い点が出る程度。
「今年はもしかして楽勝かも!」
なんて、少し気を緩め始めました。
そのときです。
あいつを見つけました。
ハダニです
昨年は、ほとんどハダニの被害が気になりませんでした。
ところが今年。
少数ではあるものの、明らかにハダニと思われる被害を受けた苗が見つかりました。
「あれ?去年はいなかったのに、なんで今年はいるんだ?」
そこで店長が最初に疑ったのが、
強遮光です。
昨年は遮光が足りず、ハウスの中はまさに灼熱状態でした。
一方、今年は昨年の反省から遮光を強くしています。
当然、ハウス内の温度も昨年より抑えられます。
もしかして、
多肉にとって過ごしやすい環境にしたら、ハダニにとっても過ごしやすい環境になってしまったのでは?
そんな疑問が湧きました。
そこで調べてみると、これがなかなか面白い。
ハダニは「高温乾燥を好む」とよく言われます。
でも、
暑ければ暑いほど元気になるわけではありません。
ナミハダニを15〜40℃で飼育した研究では、15℃から32.5℃までは温度が上がるほど発育期間が短くなりました。
ところが、
35℃以上になると、逆に発育が遅くなります。
さらに温度が上がれば、高温そのものがハダニにとってストレスになります。
ということは、
昨年のようにハウス内が40℃を超えるような灼熱状態では、
ハダニの活動や増殖そのものが抑えられていた可能性があります。
そして今年。
強遮光によってハウス内の温度が下がった。
多肉にとってはもちろん良いことです。
ところが、その温度低下によって、
今度はハダニにとって活動・増殖しやすい温度帯に近づいてしまったのかもしれません。
なんということでしょう。
去年は、
「敵は強烈な日差しだ!」
と思って遮光を強くしました。
今年はその敵をある程度抑えることができた。
すると今度は、
ハダニが出てきた。
もちろん、
「強遮光をするとハダニが増える」
という意味ではありません。
昨年と今年では湿度や天候、ハダニの発生量など他の条件も違いますので、遮光だけが原因だったとは断定できません。
ただ、
昨年はハダニにとって暑すぎた。
今年は強遮光によって、ハダニにとっても活動しやすい温度になった。
その可能性は十分考えられそうです。
そして改めて思いました。
遮光を強くしたから、夏対策は終わりではない。
強い日差しを抑えれば、今度は害虫。
環境を一つ変えれば、また別の問題が見えてくる。
多肉栽培って、
本当に一つ解決すると次が出てきますね。
真夏の薬剤散布は慎重に
ハダニを見つけたら、
「じゃあ殺ダニ剤を散布すればいい」
となります。
もちろん、それも選択肢です。
ただ、うちでは真夏の薬剤散布にはかなり慎重です。
高温期の薬剤散布では、薬剤や作物、散布条件によって薬害のリスクがあります。
特にハウス内は、
温度が上がりやすい。
風通しも露地ほどよくありません。
「明日は少し涼しいから大丈夫だろう」
と思って散布しても、
天気予報より気温が上がることだってあります。
ですから多肉屋365では、
真夏は無理に薬剤散布をせず、
まず物理的にハダニを減らす方法を取っています。
※農薬を使用する場合は、必ず対象作物への登録内容、希釈倍率、使用回数、使用時期、注意事項を確認してください。
ハダニ対策は水で洗い流す
ハダニ対策として、
苗を水に沈める方法を紹介している方もいます。
ただ、たくさんの苗を管理しているうちでは、
一鉢ずつ水に沈めるのはかなり時間がかかります。
そこで、
水で洗い流す
方法を取っています。
やり方はとてもシンプル。
晴れの日が続いていて、土の乾きも問題なければ、
夕方にさらっと散水します。
ハダニは葉の表面だけでなく、
葉の隙間や裏側にもいます。
ですから、
葉に水がしっかり当たるように散水します。
曇りや雨の日が続いている場合は、
土の状態を見て判断します。
水を与えたくないタイミングもありますからね。
被害株を見つけたら、しっかり洗う
もしハダニ被害と思われる苗を見つけたら、
その苗はもう少ししっかり洗います。
ただし、
「今は鉢に水を入れたくない」
ということもあります。
そんなときは、
鉢を傾けます。
そして、
土にはなるべく水を入れず、
葉だけを洗うように散水します。
完全にゼロにできるとは考えていません。
それでも、
物理的に数を減らす。
そして毎日苗を見る。
うちでは夏場、この方法を基本にしています。
強遮光にも「落とし穴」がある
昨年は、
「とにかく日差しを弱くしなければ」
と考えていました。
今年は、
「遮光を強くしたからもう安心」
と思いかけました。
でも実際には、
遮光を変えれば、
ハウスの中の温度も、光量も、湿度も変わります。
そして環境が変われば、
今まで目立たなかった問題が見えてくることもあります。
だから、
遮光率だけ決めて終わりではない。
多肉を見ながら、
その年の気温、
天気、
風、
害虫、
水やり、
全部を合わせて調整する必要があります。
これが今年の夏、
店長が改めて感じたことです。
おまけ:クライギアナ「チワワ」
最後におまけ。
BASE通販に出品予定の、
クライギアナ チワワ。
この「チワワ」は、
メキシコのチワワ州のことです。
そして皆さんご存じ、
あの小さな犬の「チワワ」。
犬種名のチワワも、メキシコのチワワ州に由来します。
1800年代、チワワ州周辺で見つかった小型犬がアメリカへ渡り、
その土地の名前から、
「チワワ」
と呼ばれるようになったとされています。
ですから、
「この多肉のチワワって、犬のチワワ?」
と思ったら、
実はどちらも元をたどれば、
メキシコの地名なんですね。


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